秋山謙一の映像業界トレンド探訪 050

国内3世代目となるiPhone 4

 

 アップル製携帯電話iPhoneが6月25日にフルモデルチェンジした。発売後わずか3日間の販売台数が、ワールドワイドで170万台を超えたようだ。2008年7月11日に発売されたiPhone 3G、2009年6月8日に発売されたiPhone 3G Sの発売後3日間の販売台数はいずれも100万台であったことを考えると、iPhone 4の登場がどれほど期待されたかということでもある。当初発売はブラックモデルのみで、この号が発刊される頃からホワイトボディが登場しているはずだ。本稿執筆段階では発売から1週間が過ぎた7月5日だが、未だにワールドワイドで品不足が解消されていない状況が続いている。

 国内では3世代目のiPhoneだが、2007年6月29日にはGSM/EDGEネットワークを使用した初代iPhoneが発売されているので、iPhone世代は4世代目となる。そして3年が経過した今回初めて、ボディ形状と液晶解像度を変更したフルモデルチェンジを行ったことになる。ボリューム調整の2つとスリープスイッチ、バイブレーションモード切り替えという4つのボタンしかないiPhoneの基本デザインは、iPhone 4でも踏襲。ボディ両面にアルミノケイ酸ガラスを採用した平面形状へと変更になった。

 アップルは、同じボディや液晶を使いながら、1年に1回しか機種変更を行わずに販売して来た。半年に1度、1つのメーカーからさまざまな機能を持ったモデルを登場させなくてはならない国内メーカーに比べ、なんとシンプルなことか。3 年が経過しても、色褪せて見えることはなかったのである。

 もちろん、ハードウェア性能は毎年進化している。初代はGSM/EDGEネットワーク限定、2代目で3Gに対応し、3代目で高速化とオートフォーカス搭載ムービー対応カメラ、コンパス機能を追加した。こうしたハードウェアの機能向上以外に、中身の基本OSであるiPhone OSもバージョンアップし、ソフトウェア面でも機能向上を続けている。3年経っても色褪せない理由は、ユーザーが必要なアプリケーションを追加しつつ、OS自体もバージョンアップしているからに他ならない。

 筆者は、日本での発売時に並んでiPhone 3Gを購入したのだが、昨年出たiPhone 3GSには機種変更することなく、iPhone 4の発売を迎えた。バッテリーがへたってきていたこと、ムービー撮影モードがないこと、オートフォーカスによりシャープな画像が撮れないことを除けば、まだまだ現役として活用できるものであった。iPhone 4が発売される4日前の6月21日には、新しいOSであるiOS 4の提供が開始された。OSの一部機能が使えなくはなったが、それでもiPhone 3Gに載せて利用することが可能だった。

 つまり、iPhoneはフルモデルチェンジまでの2〜3年。さらに最終年のOSが更新される1年を加え、3〜4年は使い続けることが可能な電話だということだ。バッテリーは交換できないので、フルモデルチェンジ段階でバッテリー利用時間と相談して決めればいい。長期保証であるApple Protection Planが2年間であるから、2年目を過ぎてしまえば機種交換検討時期という見方もできるかもしれない。

 

自分撮りカメラを搭載

 iPhone 4の大きな進化と言えば、iPadに搭載されたオリジナルCPUのA4が搭載されたこと、HD720/30pビデオへの対応とフロントカメラが搭載されたことだろう。フロントカメラは、これまでのボディ背面に付くメインカメラとは別に、ボディ前面に新設された自分撮り用カメラのことだ。これまでのiPhoneでは、自分を写すようなカメラの使い方はしにくかった。画面上のボタンをタッチするシャッター方式であることも自分撮りを難しくしていた。背面のアップルマークを使用して自分の鼻の頭を写しながら、画面上を撫で回してシャッターを切る。そんなことをしていた人もいるかもしれないが、基本は自分撮り拒絶の携帯だった。

 今回新たにフロントカメラが取り付けられたのは、FaceTimeと呼ばれるビデオ会話の実現だ。これまで、メッセンジャー機能はともかく、携帯でのビデオチャット利用には懐疑的な見方だったアップルが、大きく方針を転換させてきたことは驚きだ。Skypeなどを使用したビデオ会議が普及してきたことも大きいだろう。

 フロントカメラに搭載されたのは、VGAサイズのムービー撮影にも対応したもの。自分撮りのサブカメラではあるがオートフォーカスにも対応している。VGAつまり640×480サイズのムービーへの対応は。iPhone 3Gで初搭載となり、2009年秋のiPad nanoにも搭載されていたので、目新しい機能ではない。ところが、メインカメラと合わせて考えると、非常に魅力的になってくるから不思議だ。

 

▲iPhone 4のHD720/30pをMacのQuickTime 7で開いた。書き出し機能でMP4を選択し、ビデオ、オーディオともにフォーマットを「そのまま」を選んでファイルのコーデックを確認してみる。ビデオが「H.264 1280×720」、オーディオが「AAC-LCミュージック モノラル 64kbps、44.100kHz」であることが分かる。


HD720/30pムービーに対応

 iPhone 4のメインカメラは、横1936×縦2592ピクセル。500万画素の静止画と、HD720/30pのムービーに対応している。メインカメラの横には、直径1mmほどのフラッシュ用のLEDを配置している。これはムービー利用時に常時点灯することも可能だ。このLEDは、極小とはいっても直接見るとかなり眩しく感じるほどの高輝度タイプ。人物撮りのキャッチライトには充分な明るさだが、ディスプレイや光沢物などでは1点照明であるが故の不自然なスポット反射が生じてしまうので注意したい。

 ムービー収録はHD720/30p。1280×720ピクセルのH.264コーデックを使用したQuickTimeムービーで、QuickTimeでファイルを開いて調べてみると、フレームレートは29.97、ビットレートは11Mbps弱。オーディオトラックはなく、44.1kHzのAAC-LCミュージックコーデックを使用して64kbpsモノラルでムービーにエンベッドされているようだ。このビットレート11Mbpsという数値は、フルHD1920×1080として面積比換算すると約24Mbpsとなる。これはAVCHDの上限に近い数値であり、画質に対するこだわりが感じられる。

 とはいえ、使用しているのは超小型のCMOSセンサー。決して読み出し速度が速いとは言えず、ローリングシャッター現象は初代から変わらず激しく生じる。手振れ補正が付いているわけでもないので、見栄えのする映像が撮るためには、どれだけしっかりと固定して撮影できるかが鍵になりそうだ。

 

iPhone上でHDビデオ編集可能に

 さて、先ほどフロントカメラとメインカメラを合わせると魅力的になると書いたことを思い出して欲しい。高速なCPUであるA4を搭載したiPhone 4の登場に合わせて、アップルとしては初めて、iPhoneにビデオ編集ソフトウェアiMovieを提供することにした。HD720/30pの動画を携帯上で組み合わせてムービーを作成して公開できる。H.264のHDムービーの編集を、数年前のノートブックでは苦労していたということを振り返るとき、iPhone 4のパフォーマンスに驚かされる。

 しかも、iMovieの価格はたったの600円。ビデオ編集という意味では6,000円の間違いじゃないかと思う人がいてもおかしくはないが、3桁というのは間違いではない。iMovieは、「モダン」「明るい」「旅行」「愉快」「ニュース」という5つのテーマを利用して、テキスト追加やシーン展開が可能になっている。映像を並べてカットの長さを決めて、シーン展開にテーマを適用するという使い方だ。トランジションも付いているが、クロスディゾルブだけで切り替える長さの調節を決められた数値で選ぶしかない。あくまでも手軽さ重視の設計だ。こうなってくると、他のビデオ編集アプリケーションも使いたくなって来るが、現状ではまだまだHD編集には対応できていない。HD編集できるアプリケーションの登場が楽しみになって来た。

 ビデオ編集だけでなく、USTREAM BroadcasterやTwiVideoなどライブ中継向けアプリケーションの高機能化にも期待したくなって来る。平面ボディを採用し、フロントカメラとメインカメラを表裏に持つiPhone 4であるからこそ、自分の姿をPinPのサブ画面に映しつつメインカメラで撮ったり、フロントカメラとメインカメラをスイッチングして撮影したりできるようになって欲しいと思うのだ。こちらも、現状ではメインカメラとフロントカメラを切り替えられるソフトウェアは出て来ていない。ライブ中継を3Gで行うには、上りの帯域が確保できないことも多い。Web用と割り切って、メインカメラもサイドカットで4:3で扱い、フロントカメラとのアスペクト比を統一してもいいのかもしれない。

 iPhoneを使ったこれまでのライブ中継では、iPhoneを持っている人の視点で撮影して、撮影者の声はすれども顔が出ることはほとんどなかった。そのため、内容によっては、お仕着せがましい映像となってしまうことも多々あった。フロントカメラを活用して、撮影者の顔が見えることで、より親近感のあるライブ中継が可能になるはずだ。

 放送分野では、メインカメラの16:9を優先して、フロントカメラは4:3でPinPで使用する。突発的な出来事を前に、iPhone 1台で解説付きの現場収録が可能になる。こうした使い方では、コマ落ちしながらもまず中継。中継と同時に映像はメモリに記録しておき、高解像度版は後からゆっくり送信といったことも可能かもしれない。

 iPhone 4は、可能性を秘めた中継局になりうるのではないか。



	

HDカムコーダーの形状

肩乗せタイプ
72%
小型パームタイプ
28%
投票総数:114

期待する圧縮フォーマット

HDCAM
34%
HDV
27%
HDCAM SR
10%
DVCPRO HD
11%
AVC-Intra
6%
XDCAM HD
5%
AVC HD
7%
投票総数:119

HDで期待するフレームレート

60
59%
24
34%
25
4%
50
4%
投票総数:107