今回、4:2:2方式を採用するCanon XF305で、人物のクロマキー撮影を行ない、風景映像と合成し、その“合成レベル”を検証。
合成作業は、映画「Always三丁目の夕日」プロジェクトにも参加した若手実力派のCGディレクター井筒亮太氏(株式会社デジタル・フロンティア所属)が担当。使用した合成ソフトは、Adobe After Effects。合成作業後、XF305 / XF300の印象を井筒氏に聞いてみた。

XF305は、4:2:2方式のカメラの割に、とてもコストパフォーマンスがいいですね。使用前は、いくら4:2:2方式と言っても、他社のハイグレードクラスのカメラと比べれば、様々な要因から、「そんなに完璧に合成できないだろう」と思っていました。でも、実際に作業をしてみて、他社のハイグレードクラスのカメラと比べても、正直な印象として「遜色ない」。4:2:2方式はもちろん、やはりキヤノンのレンズの質の高さなのかなと思います。正直驚いています。
人物と、背景を合成した時に、視聴者が無意識に見ているのが、“髪の毛”なんですね。髪の毛が“背景に馴染んでいない”と、違和感が生じてしまう。合成したことが、バレてしまうというか・・・なのでCGディレクターとしては、“別撮り”した感じを、視聴者に持たせないように頑張るわけですけど、そのポイントとなるのが、「髪の毛が背景に馴染んでいるかどうか」なんです。風になびく髪の毛を、1本1本表現できるかが勝負なんです。
風になびく髪の毛に対して、1本ずつ「マスク」を作るなんて出来ないので、撮影するカメラ、撮影時の条件(主にライティング)で、「合成の質」はすべて決まってしまうんです。カメラに依存せざるを得ない。逆に髪の毛以外は、後処理で何とでもなるんです。
今回は、XF305での撮影でしたが、「風景映像」と「髪の毛」の合成具合は、申し分ない。人物の細い髪の毛が、1本1本綺麗に抜けるんです。
PVでも映画でも通用する、非常に高い合成レベルです。合成撮影をする上で、髪の毛の抜け具合が、撮影カメラを選ぶ「基準」になりますが、XF305 / XF300は、まさに「基準」になるカメラです。しかも、コストパフォーマンスに非常に優れているので、とても驚いています。

シースルーの衣裳をモデルに着てもらって、クロマキー撮影をしてみましたが、衣裳の細かい穴も、背景の映像が滲むことなく、綺麗に抜けました!
しかも、合成作業をするにあたって、“苦労せず、時間をかけずに”合成作業できたことには、感動しました!
実は、シースルーだったり、編み目の細かい衣裳は、細かい穴の部分に微妙な影が出ちゃうんです。そうなると、なかなか簡単にクロマキー合成ができなくて、やっかいなんです。4:2:2方式のカメラであっても、あまりレンズがよくないカメラで撮影すると、なかなか“一発で抜けない”。そういう場合は、地道にアウトラインを追っかけて、マスクを作る作業をせざるを得ないんですが、そうなると、作業時間がどんどん増えていくんです。
でも、今回、XF305で撮影したシースルーの衣裳は、“一発で”抜けました。
そして簡単に、背景映像に“馴染ませる”ことができた。
撮影後、Abode AfterEffectsでの“後作業”にあまり時間をかけずに“抜ける”状態に持っていけるので、XF305 / XF300で撮影すれば、合成作業の時間が圧倒的に少なくて済む。
実際、1カットに対して、3時間から5時間かかる合成も、このXF305、XF300で撮影した素材ならば、30分、1時間で済ませることも可能。PVや映画のように、合成する部分が、トータルで何十カット、何百カットとなると、大幅な時間短縮に繋がる。もちろん大幅なコスト削減にもなりますね。

4:2:2方式のカメラであっても、小型カメラの場合は、たいてい「人影」は、きれいに抜けない。なので通常は、撮影時に撮った人影は、切ってしまうんですね。そして、後で別で作った「人影」を、合成するんです。
ただ、リアルな人影ではないので、どうしても違和感が生じてしまうし、何とか自然に表現しようとすると、莫大な作業時間を要してしまう。
今回はXF305で撮影した人物の人影を、そのまま合成してみましたが、かなり綺麗に合成できました。芝生に映る人影が、しっかり調和しています。
この機動力ある小型のカメラで、被写体の影をそのまま活かせるなんて、衝撃的です。

CGディレクター 井筒亮太氏
今、背景はすべて「CG」という映像が、PVや映画でも、どんどん出てきているんですが、どの業界も、予算は厳しくなっているんですね・・・
XF305 / XF300は、今まで以上に高いクオリティの作品を、低予算で撮影することが出来るので、予算が厳しいプロジェクトでも、受け入れられるカメラだと思います。CGディレクターとしても、クオリティを高められる“武器”になるカメラですね!解像度もFull HDですので、PVはもちろん、映画でも試してみたいですね!
さらに、今回、クロマキー撮影を行なった中谷宏道氏に、カメラマンの立場から、XF305 / XF300の印象を聞いてみた。中谷氏は、矢沢永吉や、BONNIE PINKなどのPV撮影の他、大手メーカーのCM撮影を数多く手がける撮影監督。XF305 / XF300に対して、どのような印象を受けたのか。

「XF305 / XF300の液晶画面ならば、基本的な撮影ならば、
別にモニターを用意する必要はありません。」
カメラマンの中谷宏道氏(写真手前)
同じキヤノンのXH G1Sと比べると、まず、フォーカスが格段に扱いやすくなった。「始点」と「終点」があるため、“フォーカス送り”をする際、指の感覚だけで、確実に行なうことが出来るようになったことは、非常に大きい。
あと、4.0型の液晶画面の見やすさは、とても大きなメリットです(123万ドット)。液晶画面が見にくいと、「フォーカス合わせ」が、やりにくくなる。そのため、今までは、小さなハイビジョンモニターを用意していましたが、XF305 / XF300の液晶画面ならば、基本的な撮影は、別にモニターを用意する必要はありません。余計なコストもかからないので、ありがたいですし、何といっても、別モニターがいらないことは、撮影現場での機動力の点からも、大きなメリットとなります。
その他、VE(ビデオエンジニア)の山口武志氏からは・・・
XF305 / XF300は、画質、色処理能力、ハイスピードなど全般的に、他社の同等クラスのカメラより優れている印象を受けました。
これまでは、クロマキー撮影では、小型のカメラは、そもそも選択肢にすら入らなかった。でも、XF305 / XF300は、ハイグレードクラスのカメラに割って入って、充分選択肢になり得るカメラ。
3カメ、4カメといったマルチ撮影も、タイムコードがロックできるので、非常に使いやすい。普通の大型カメラと同じ感覚で扱える。
ただ、それだけにカメラコントロールが付いていないのが、VE的には、唯一のマイナスポイントかな・・・

「XF305 / XF300は、ハイグレードクラスのカメラに割って入って、
充分選択肢になり得るカメラ」VE(ビデオエンジニア)の山口武志氏
そして、最後に、今回制作全般を演出したディレクターの立場から・・・
予算がないテレビ番組では、「合成加工」は“高嶺の花”でした。
それが、XF305 / XF300の登場によって、今まで諦めていた「合成」演出が可能となることは、“革命的”です。
「演出」の幅が広がる点で、ディレクターにとっても、確実に“武器”となるカメラです。今回は、CGディレクターが、AfterEffectsで合成加工し、自分がApple Final Cut Proで完パケを作りましたが、AfterEffectsやFinal Cut Proといった手軽なソフトだけで、非常に高いクオリティの合成作品が作れる!
しかも、メディアがコンパクトフラッシュ(CFカード)というのも、コストパフォーマンスの面から、非常にありがたい! CFカードを、PCに読み込んで、すぐノンリニア編集できるワークフローは、1秒を争う報道番組や情報番組の現場では、特に大きなアドバンテージになります。
また、テレビ番組に限らず、VPでも威力を発揮すると思います。
たとえば、英会話のトレーニングDVDでは、登場人物を、よく海外の街並の映像や、エアポートの映像と合成させたりしますが、この作業が、簡単に、素早くできる。XF305 / XF300でしっかり撮影さえしておけば、ある程度のレベルならば、Final Cut Proだけでも充分作り込めます。直接的にコスト削減に繋がるので、特に小規模の制作会社にとっては、ものすごいメリットだと思います。
そういった意味でも、XF305 / XF300の登場は、まさに“革命的”だと思います。
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