
SIGGRAPH 2009クレッセントブースには常に人だかりがあった。
2009年12月16~19日,デジタルコンテンツ分野を代表する国際カンファレンス&展示会「SIGGRAPH ASIA 2009」(以下 SIGGRAPH)がパシフィコ横浜で開催された。
SIGGRAPHはCGの祭典とも言われ、世界中のテクノロジーとアートが一堂に終結した。
そして展示会場では、多くのメーカーも最近技術を紹介していたが、その中でも株式会社クレッセント(以下 クレッセント)ブースでは、常に訪れる人が絶えない盛況ぶりであった。
クレッセントはコンテンツ制作を支える優秀な製品、ツールを世界中から発掘し紹介してきた実績がある。この実績は映画、TVなどのエンターティメントに留まらず産業系にまで広がり、多くのユーザから高い評価を得ているが、2009年、今まで単体製品で提供してきたツールを繋げるLink-ALLプロジェクトを開始した。
このLink-ALLについてクレッセント 代表取締役 社長 小谷 創氏はこう語った。
「今まで私たちが提供していたのは単体の製品であり、あくまで点としてのソリューションでした。しかし、(日本を含め)世界を見渡してみると、連携すればもっとクリエータにとって使いやすいソリューションが提供できると感じ、『Link-ALL』プロジェクトをスタートしました。点を繋げて線となり、それが面になれば、広い範囲でクリエータの皆さんのお手伝いができ、製品ごとの機能も単体で使うよりも高いパフォーマンスを引き出す事ができます。」
クレッセントにはモーションキャプチャシステムとして、デファクトとなったVICONやインタラクティブ3D視覚化ソフトウェアの3DVIA Virtoolsがあるが、SIGGRAPHではLink-ALLをさらに加速する新しいメンバー、ハンディスキャナ Noomeo OptinumColorがランナップされた。
一般的なスキャナの用途には、クレイやモックモデルをスキャン測定し、CADデータに反映させるために使われ、業界に向けた大型のスキャナが主流であった。しかし、このNoomeo(ノメオ)社 OPTINUM は手軽なハンディタイプで市場にアプローチしてきた。
noomeo社CEO Vincent LEMONDE氏は、このハンディスキャナの開発を始めたきっかけとして、手軽で精度の高いスキャナの需要を感じたためと語った。
「スキャナは家庭用から工業系まで様々な用途があります。ただ、今まで手軽さと精度を双方兼ね備えた製品はなかったので、この需要を掘り起こせると確信しました。私たちは2006年から研究開発を行い今年(2009年)にOPTIUMをリリースしましたが、次は携帯電話のカメラで3Dスキャンする製品を開発しています。」

フランス noomeo社CEO Vincent LEMONDE氏(写真左)
とアジアで初のお披露目となった高精度ハンディスキャナ OPTIUMColor(写真右)
このスキャナはハンディであるが、精度は非常に高い。照射したレーザの反射を2つのレンズで受け、距離を測定し形状を認識する。そして、そのデータを点群としてUSBでパソコンに送り3D化し、さらに同時にテキスチャを含め取り込む。スキャンスピードも速く、隠れている部分(上記写真の例で言えば、テーブルに接しているコップの側面など)もひっくり返して続けてスキャンすれば、アプリケーションの方で自動的にマージしてくれる。

OPTIUMでつぶれた紙コップをスキャン(写真左)しそのデータを独自開発の
アプリケーションで点群から3D化を行ない、テキスチャまでつけてPC上で再現
(写真 右)する事が可能だ。
この精度と機能があれば、利用用途は広く、エンターティメントでは手軽にフェイシャルキャプチャの撮影もでき、産業系でも試作機やモックをスキャンし、3DCGとして広告用のグラフィックとして使う方法もある。またスキャンデータを3DVIA Virtoolsに取り込んで4D View Solutionsのコンテンツとして活用すれば、VRコンテンツ制作の期間がさらに短縮が可能だ。
4DView Solutions(以下 4DView)は、イメージキャプチャという新しい概念を持った製品である。
これは複数台の4DView専用カメラで撮影したデータをリアルタイムで3D化されるため、自分が映像の中に入り込み、バーチャルな空間を動き回るシミュレーションが可能となる。
※デモ映像はこちらを参照
4DViewはその特殊な技術により、学術的なシミュレーション解析やインターフェイスデザイン検討向けと考えられがちだが、映画での面白い事例もあると4DView CEO Richard Broadbridge氏は語った。
「映画制作では、クオリティ、コスト、そして制作時間のバランスを保つのは難しい場合があります。例えば、ヨーロッパ中世時代の甲冑の騎士が群集で登場するシーンを必要としている映画がありました。3DCGで制作するにはコストも時間も無かったのです。そこで、4DViewを使い実際に役者に甲冑を着せて行軍や戦いのシーンをグリーンバックで撮影しました。それだけで3Dデータとして取り込めるので、数を増やして群集シーンの制作を行いました。」

4DView Solutions CEO Richard Broadbridge氏。
フランスの国営リサーチセンターINRIAの画像解析技術から
生まれた4DView Solutionsは、リアルタイムにテキスチャと
動きを合わせてイメージキャプチャする技術を製品化した。
映画で群衆シミュレーションといえば、massive softwareがある。4DViewでキャプチャした3Dをmassive softwareでシミュレーションするワークフローはさらに制作期間の短縮とクオリティの向上が得られるであろう。
Video Journalでも度々取り上げている massive software(以下massive)は、日本でもTVや映画で採用され、2009年は明確なポジションを残した年であった。もちろん海外では「Avatar」、「2012」等で活用され高い評価を得ている。massiveのCTOを勤めるStephen氏はこれから製品の方向性についてこう語った。
「massiveはwetaのインハウスツールとして誕生した経緯から、映画やテレビ、ゲームといったエンターティメントでの採用が先行しました。しかしながら、massiveは自律型シミュレーションであり、設定するキャラクタには視覚、聴覚、触覚があります。そのため、massiveの機能を引き継ぎながら災害時のシミュレーションやプラント建築の分野を見据えたMassive Insight™ も開発しています。このようにエンターティメントから産業まで活用していただける市場も2010年から広がっていくと考えています。」

massive software Founder and CTO Stephen Regelous氏。
massiveはニュージーランド本社になるが、開発はタイオフィスにて行なっており、
Stephenもタイで開発部隊を率いている。
映像制作の市場はエンターティメントに目が注がれがちだが、産業系でもビジュアライゼーションによるシミュレーション需要は高い。massiveも映像演出の機能アップを図りながら、産業系が求める要素を取り入れ、クレッセントのLink-ALLによりOPTIUMスキャナ、4DViewと繋がる事で市場のリクエストに応じるソリューションが出来上がる。このソリューションでもう1つ大切なピースがある。レンダリングだ。クレッセントはこのレンダリングにおいても、RenderManレンダラの3Delightがある。
3DelightはPixar同様に、RenderManコンソシアムの中心となるRenderMan互換のレンダリングアプリケーションである。
RenderManは高いクオリティを持っているが、RIBファイルを通じてレンダリングを行なうため、このRIBを理解していないと中々扱いが難しい点があった。しかし、3DelightはそのRIBをMayaやXSIのレンダリングプラグインとして使う事を可能とした製品である。
広くコンサルティングを提供するThe /*jupiter jazz*/ group(以下 /*jupiter jazz*/ )のPaolo氏は3Delight用のツールも数多く開発する中で、もっとも使い勝手の良いレンダラが3Delightであると語った。
「/*jupiter jazz*/は様々に変化するCG/VFXツールの中で、パイプラインやワークフローのコンサルティングを提供しています。そのため、多くのクリエータにとって最適なツールを常に見続けていますが、3Delightは今最高のレンダラといえます。まず、APIで多くの部分を公開しているので、それぞれの制作現場にあったツールを開発しやすい点が上げられます。また、レンダリングクオリティはもちろんCPUやメモリーが非常に効率的に扱うプログラムが組まれているので、レンダリングという表現の場において、多くのクリエータが求める答えを出せるためです。」

The /*jupiter jazz*/ group 3Delight Help Paolo Bert氏。
The /*jupiter jazz*/ groupとは、VFXのプラグインを含めコンサル
ティングから開発、制作を行う世界のトップクラスのコンサルティング
を提供する集団である。
3Delight 9.0では、初回のレンダリングでキャッシュを、持たせることで2回目以降のレンダリングスピードを向上させたり、ポイントクラウドに対する機能の向上や複数台のカメラを一度にレンダリングを行なうデモを含め紹介されていた。レンダリングのクオリティと速度はクリエータが頭を悩ます部分であるが、3Delight 9.0と/*jupiter jazz*/が開発したツールを組み合わせれば解決できるフローも多くあるため、3Delightと/*jupiter jazz*/が公開しているツールは要チェックである。
Link-ALLのワークフローでデータの取りまとめを行なうのが、このMarquise Technologies MIST(以下 MIST)だ。
映像のデジタル化が進む中でDI(デジタル・インターミディエイト 以下DI)ソリューションがいくつも登場しているが、MISTは使い勝手の良いデッキというコンセプトを持ち込んできた。MISTの特徴についてとクレッセント 林 直樹氏はこう語った。
「デジタル化に伴い、カメラでの収録から編集、送出までファイルベースでシステム構築するワークフローが必要になってきました。ただ、様々なフォーマット(RAWを含め)がありますので、このフォーマットに対しカラーグレーディングやタイムコードに十分対応できていない部分があります。MISTはCINEON、DPXはもちろんApple ProresやDNxHDにも対応していますし、カメラRAWデータとしてARRI、REDのR3Dをサポートし様々なプロジェクトにも対応できます。」
MISTではRS422にてスレーブ/マスターの両方においてリモートプロトコル経由でコントロールもできるため、DDRとしても使用できるメリットがある。

デジタル化が進む映像業界でDIデッキというコンセプトで切り込む
Marquise Technologies MIST。
クレッセントはSIGGRAPHでCHRISTIE DIGITAL社のHoloStage-MINIと連携した没入型VRシステムを紹介していた。Link-ALLの実例の1つではあるが、3DVIA VirtoolsによりCADデータからインタラクティブなコンテンツを3Dで制作し、VICON BONITAでトラッキングし、HoloStage-MINIでVR体験ができるコンパクトなシステムが実現していた。
HoloStage-MINIは床と壁1面のシンプルな構成のため、省スペースで没入型VRを構築できる。しかし、省スペースであるがため、トラッキング用のカメラもVICONが新しくリリースした手のひらサイズのBONITAを合わせることでスクリーンの邪魔にもならない。

3DVIA Virtools でVR用コンテンツを制作し、小型トラッキング
システムVICON BONITAとCHRISTIE DIGITAL社HoloStage®-MINIを
繋げることで実現した低コスト没入型VRシステム。
SIGGRAPHでは貴重なトークセッションなども開催されていたが、その人気を上回る活気があったのがこのクレッセントブースのLink-ALLであった。実際に目にして、ソリューションを体験できる機会はこのようなイベントでしかなく、また世界中の優れた制作ツールが繋がり、補い合うソリューションが多くを惹きつけた理由である。2010年には、このLink-ALLはクリエータの制作意欲を刺激するプラットフォームになるであろう。
URL: ・http://www.crescentinc.co.jp
会社住所:東京都中央区築地4-3-8 登喜和ビル4F
会社概要:1999年3月の設立以来海外より先進のビデオ・オーディオ機器をいち早く輸入し、プロフェッショナル、プロシューマゾーンを中心に販売し、モーションキャプチャシステムから映像デジタルワークフローの日本における先駆者的存在。
* この記事、会社情報は2009 年12月の取材構成を基に構成されています。その後変更となっている場合もございますのでご了承下さい。